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転居を伴う異動において転勤拒否を理由に懲戒処分ができるか
日本においては、いわゆるメンバーシップ型雇用が主流であり、終身雇用を前提として解雇権は大幅に制約されている一方で、企業には、転居を伴う異動を含む配転命令権が広く認められてきました。もっとも転居を伴う配転命令については、その有効性が争われることがしばしばあります。
配転拒否をめぐるリーディングケースは、東亜ペイント事件です。神戸営業所に勤務する営業担当に対し、名古屋営業所への転勤を命じたところ、当該労働者が母親、妻、長女との別居を余儀なくされることから、転勤を拒否したことを理由に懲戒解雇した事案です。
最高裁判所は、使用者は業務上の必要に応じ、その裁量により労働者の勤務場所を決定することができるが、転居を伴う転勤は、労働者の生活環境に少なからぬ影響を与えるものであるから、使用者の転勤命令権は無制限に行使できるものではなく、これを濫用することは許されないとした上で、「当該転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該転勤命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情の存する場合でない限りは、当該転勤命令は権利の濫用になるものではないというべきである」という判断基準を示しました。
そして、業務上の必要性については、「当該転勤先の異動が余人をもって容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の高揚、業務運営の円滑化など会社の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性の存在を肯定すべきである」と判示しました。そして、本判例の事案においては、名古屋営業所の主任の後任者として適当な者を名古屋営業所へ転勤させる必要があったことから、本件転勤命令には業務上の必要性が優に存したものということができ、労働者の家族状況に照らすと、名古屋営業所への転勤が労働者に与える家庭生活上の不利益は、転勤に伴い通常甘受すべき程度のものであるとして、転勤命令は権利の濫用に当たらないと判断しました。
就業規則に転居を伴う異動を命じる根拠があり、かつ、個別の労働契約にも勤務地限定の合意はないのであれば、会社は配転命令権の濫用に当たらない限り、転居を伴う異動を命じることができます。
就業規則には懲戒処分事由として業務命令違反が定められていることが多くあります。配転命令が有効である場合、それを拒否した場合には業務命令違反として懲戒処分が可能となるのが原則です。ただし、特に懲戒解雇という極めて重い処分を行うに当たっても、すぐに懲戒処分を行うのではなく、まずは現状をよく説明して異動を拒む従業員の説得を試みることが必要です。懲戒解雇を行った場合には訴訟等の紛争になり可能性も極めて高いため、説得に応じず最後まで移動を拒否し続けた場合の最終手段と位置づけるべきです。(岡本)
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