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懲戒処分の手続きを順守していないことを理由として処分が無効になる場合があるか
懲戒処分が有効とされるためには、「客観的に合理的な理由」があり、「社会通念上相当」なものでなければなりません。このうち、手続的な相当性を欠く場合は、「社会通念上相当」なものと認められず、懲戒権の濫用となり、懲戒処分が無効になってしまいます。
就業規則上、懲戒委員会を設けることになっていて、その構成、任務、招集、定足数、調査、審議等に関する規定を置いている就業規則がありますが、法律上、就業規則にそのような規定を置く義務はありません。むしろ、就業規則で定めてしまうと、裁判では就業規則の定めに沿った懲戒委員の討議等を経ていない懲戒処分は無効と判断される可能性が高くなります。懲戒委員会が開催されることにより、本来無効な処分が有効になることはなく、使用者にとってはかえって負担となるだけで機動的な懲戒権の行使が阻害されてしまいます。そのほか、懲戒委員会を開催するよりも前に当該労働者が辞職し、さらには退職金が受給できてしまうという事態が生じかねません。
他方で、適正手続きの保障の観点から、懲戒処分が有効となるためには、就業規則等にその規定がない場合であっても、被処分者に懲戒事由を告知して弁明の機会を付与することが最低限必要と解されています。
また、弁明の機会の付与は、事実誤認に基づく懲戒処分を防止する機能を有するほか、懲戒処分前に労働者の言い分を聴いておけば、後日訴訟になった場合になされるであろう反論を予想することが可能になり、弁明の機会を付与した際と異なる主張を行ってきた場合には、その矛盾を指摘することも可能になります。
以上からすると、基本的には就業規則に懲戒処分の手続き規定を置くよりも、弁明に機会の付与の規定を置くことは必要です。
なお、弁明の機会の付与の規定が設けられていない場合でも、弁明の機会が付与されなかったことを理由に懲戒処分の手続きの相当性を否定し、懲戒処分を無効とした裁判例もあるため、弁明の機会の付与の規定を置くかどうかにかかわらず、弁明の機会は付与すべきです。
弁明の機会を付与する規定例としては、以下のようになります。
(弁明の機会の付与)
第〇条 懲戒処分を行うためには、その対象者に対し、弁明の機会を付与しなければならない。ただし、軽微な事案で、処分対象者が処分対象の事実関係を争わない場合には、処分対象者の承諾を得たうえで、弁明の機会を付与せずに懲戒処分を行うことができる。(岡本)
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