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職歴や病歴などの経歴詐称があった場合に本採用拒否や解雇はできるか
多くの企業では就業規則において、「重要な経歴を詐称して雇用されたとき」など、重要な事柄についての経歴詐称を懲戒事由として規定しています。この「重要な経歴の詐称」とは、「具体の場合にその前歴詐称が事前に発覚したとすれば、使用者は雇入契約を締結しなかったか、少なくとも同一条件では締結をしなかったであろうと認められ、かつ、客観的にみても、そのように認めるのを相当とする、前歴における、ある秘匿若しくは虚偽の表示」を意味するものと解されており、このことは普通解雇の場合も同様と考えられます。
したがって、学歴、病歴、犯罪歴などの経歴について、その程度を検討することなく、経歴を詐称した事実のみをもって、本採用拒否や解雇することは認められず、個別の事案ごとに当該経歴の詐称が重大な経歴の詐称といえるかを確認する必要があります。
経歴詐称を理由とする解雇・本採用拒否において留意すべき点は、詐称された経歴ごとに異なります。学歴(最終学歴)は、単に労働力の評価と関わるだけでなく、使用者の企業秩序の維持にも関係する事項であることは明らかです。もっとも、企業秩序が乱されとはいえないこと、業務遂行に重大な支障がないことを理由として懲戒解雇が無効と判断された例もあり、学歴詐称による具体的な影響を検討する必要があります。
職歴は、採用判断において決定的な動機となる事情であり、採用後の業務内容や賃金の設定にも大きく影響する重要な経歴です。特に、専門的な職種における即戦力として中途採用した場合、信頼関係を根本から損なうことになります。企業としては、採用時にどのような能力・経験を求めているかを明示し、被選考者にその能力・経験について説明を求めた上で、記録として残しておくことが適切です。
病歴は、いわゆるセンシティブ情報として、その情報の収集が原則として禁止されていますが、特別な職業上の必要性が存在することその他業務の目的の達成に必要不可欠であって、収集目的を示して本人から収集する場合に限り例外的に許容され、かつ、その場合でも本人の明確な同意を要すると考えられます。そのため、使用者に対する悪質な虚偽申告があるとか、当該病歴が労務の提供において重大な支障となるなどの特段の事情が認められない限り、懲戒処分や解雇を行うことはできません。特に、精神疾患の既往歴の虚偽申告は実務上問題となることが多く、採用後に精神疾患を発症し、既往歴があったことが判明するケースがあります。このような場合、既往歴の存在は、労務提供が困難であることの一要素として考慮されるにとどまり、病歴の詐称のみをもって解雇事由とすることは難しいと考えます。
犯罪歴については、既に刑の消滅した前科が問題になりますが、その存在が労働力の評価に重大な影響を及ぼさざるを得ないといった特段の事情のない限りは、労働者は使用者に対し、既に刑が消滅している前科まで告知すべき信義則上の義務を負うものではないと考えられます。刑の消滅した前科を含め、その犯罪歴が労働力の評価に具体的にどのような影響があるかを慎重に検討する必要があります。(岡本)
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